折々の雑感149 中古レコード探訪記 その7 洋楽シングル3枚

 今回は洋楽のシングル盤を取り上げる。

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 スリー・ドッグ・ナイト(Three Dog Night)「オールド・ファッシヨンド・ラブ・ソング(An Old Fashiond Love Song)/ジャム(Jam)」、
 クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(Creedense Clearwater Revival)「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー(I Put A Spell On You)/スージーQ(Suzie Q)」、
 ポール・マッカートニー&ウイングス(Paul McCartney&Wings)「ハイ・ハイ・ハイ(Hi,Hi,Hi)/C・ムーン(C Moon)」の3枚である。

 隣町のリサイクルショップで購入した。3枚とも21円だった。これらのシングル盤を入手したリサイクルショップは、家から少し離れていて、車で25分ほどかかる。そのため、めったに行かないが、3か月に一度くらいの頻度で顔を出すと「おっ」と思えるものが演歌やアイドル歌謡に挟まれて置かれていることがある。
 この店のシングル盤は、どんなものでも一律に1枚21円である。プラスチックの箱に無造作に詰め込まれている。状態はおおむねよくない。というか、かなりひどい。ぼろぼろの状態でも歌詞カードや内袋が残っていればまだましなほうだ。なかには裸のレコードがむき出しのまま放り込まれていることもある。その上、ほこりだらけ、傷だらけ、反りまくりである。こんなのだれが買うのだ?と思う反面、こんな扱い受けるレコードが不憫でもある。
 そんななかから選り分けたのが上の3枚である。年代や傾向が似ている。同じ人がまとめて手放したのか。歌詞カードや内袋は経年なりによれていたが、盤質はわりとよかった。盤の見た目もきれいで、再生してみると、プチノイズは、ほとんど入らない。

 実をいうと、これらのシングル盤はずっと以前に買ったものだ。盤質を確認するために買ったその日に一度だけ聴いてそのまましまってあった。山下達郎さんのFM番組「サンデー・ソングブック」の6月2日の放送で、スリー・ドッグ・ナイトの「ジャム」がかかった。この曲をリクエストした人によれば「『ジャム』は『オールド・ファッシヨンド・ラブ・ソング』のB面だが、こちらのほうをよく聴いた」とのこと。達郎さん自身も「B面をよく聴いた」とコメントしていた。それを聞いて「確かウチにもあったはず」と取り出して聴き直してみた。同じ日に買ったほかの2枚もついでに聴いてみたというわけだ。

 私が洋楽を聴き始めたのは中学2、3年のころ、年代でいうと70年代の終わりから80年代に入るあたりだ。それから働き出すまでのおおよそ10年間くらいは、同時代的な聴き方、つまりはヒットしている曲を追いかけるような聴き方をしていた。そのため70年代の終わりごろから80年代後半にヒットした曲はだいたい分かる。曲名や演者が分からないものでも、聴けば「ああ、あの曲か」とか「こんな曲もあったな」という感じでおぼろげながら思い出すことができる。
 けれど、スリー・ドッグ・ナイトやCCR、ウイングスなどは同時代に聴いていないので、どの程度売れていたのか、どのように受け止められていたか、そうしたある時代におけるその曲の位置付けや聴かれ方の感覚はよく分からない。もちろん洋楽の流れについての知識のなかでバンド名や代表曲くらいは知っていた。だが、きちんと聴いたことはなかった。要はスリー・ドッグ・ナイトやCCRをよく知らなかったということである。

 改めて聴くと、これがなかなかいいではないか。いわば白人の演奏するR&Bであり、思っていたよりもブラックミュージックの色彩が濃厚である。熱っぽい歌唱と演奏だ。これはスリー・ドッグ・ナイト、CCRに共通して言えることである。「オールド・ファッシヨンド・ラブ・ソング」はメロディが美しく、どこか哀愁を帯びた感じもあって切なくしみる曲である。コーラスが素晴らしい。
 ポールの「ハイ・ハイ・ハイ」は明るく乗りのいいロックンロールだ。タイトルの「ハイ」は文字通り「ハイになる」という意味らしく、歌詞が直接的すぎるきらいがあるが、どうだろうか。「スイートバナナ」(「do ya sweet banana」)とか「僕の元気のいいおもちゃ」(「my bubby doll」)とか同内容の曲を日本語で直訳的にやったら、たぶんいまだとラジオやテレビでは放送されないだろうな。
 B面の「C・ムーン」は、ゆったりほのぼの系の曲で、私はこちらのほうが好みだ。ロックンロール以前の古い時代の雰囲気をほうふつとさせる。『サージェント・ペパーズ』に入っている「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」あたりが連想される。ウィキペディアでは「レゲエ風」と紹介されている。

 中学で洋楽を聴き始め、以来おおよそ40年間、ロック、ポップスを中心にいろいろなものを聴いてきた。10代の終わりから20代のかけて、とくに好んだのは激しくスピード感もあるものだ。具体的にはハードロックやヘヴィメタルなど。プログレもよく聴いた。キング・クリムゾンとレッド・ツェッペリンが史上最高のバンドだと思っていた。しだいにニューウエーブやオルタナティヴ系にも手を広げた。より扇情的で先鋭的、破壊的な音色へと傾倒していく。
 ただ、あるバンドや歌い手、一つのジャンルだけを掘り下げて聴くということはしなかった。音楽雑誌やFM番組で紹介されるものをまんべんなく、広く浅く、悪く言えば、節操無く聴いた。とりわけ参考にしたのはロックの名盤ガイド的な本だ。そこに紹介・解説されるアルバムをロックの歴史を「お勉強」するような感じで聴いた。あたかも文学史の本を読んでそこに出てくる小説をいわば教養として(読んでもたいして面白いとは思えず、それは強要されたものかもしれないのだが…)読むように。だからロックの評論家が名盤と規定するものは、自分でも名盤であると思い込み、ロック好きならばこれは聴かなきゃならんでしょ、というような感覚だった。けれど、実のところ、あまりピンとこないものもけっこうあった。そうなると名盤の良さが分からないセンスのない奴になってしまう気がして、通好みとされるものを無理に聴こうとしていたようなところもある。
 けれど、いまはそういうことはどうでも良くなって、ユーミンもチェッカーズもジャーニーもマイケル・ジャクソンも自分でいいと思えるものをその時々の気分で聴いている。

 そんななかでブッラクミュージックだけはずっと聴かなかった。特有のグルーヴ感やホーンの響きが苦手で、あまり好きになれなかった。ブルースやソウル、R&B、ジャズなどをいいと感じるようになったのはつい最近のことだ。この一年で新品で購入したCDを思い返してみると、ジェームス・カー、ファッツ・ドミノ、マイルズ・ディヴィス、ミルト・ジャクソン等々。若いころの私からすれば考えられなかった選択である。そもそもマイルズ・ディヴィスをのぞけば名前すら知らなかったのだ。

 以前だったらあまりピンとこなかったであろうスリー・ドッグ・ナイトの「ジャム」やCCRの「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」も、いまは味わい深く聴ける。どうやら年を重ねるにつれて音楽の好みも変わるらしい。

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