折々の雑感145 中古レコード探訪記 その6 断捨離のはずが…

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 クリストファー・クロス『アナザー・ページ』を買う。300円。帯付きでジャケットはきれい。盤質は、ややノイズが多い。レベルの低い部分や静かなバラード曲ではプチプチとしたノイズが目立って聴き苦しい。

 格安レコードを買うのはもう止めよう。そう思ってしばらくはリサイクルショップから足が遠のいていたのだけれど、また買ってしまった。先日、部屋を整理して、使っていなかったアンプやビデオデッキ、古本などを売りに行った。その際についレコードに手が伸びてしまったのだ。

 今回、かなり大量のモノを処分した。大半は、本や雑誌、パンフレット、新聞の切り抜きなどの紙類である。郷土史関係の講演会で配布されたレジュメや資料なども捨てずにとってあった。どこかに行ったときにもらってきた観光パンフレットやリーフレットの類も、集まるとけっこうな分量になる。これらをとにかく捨てた。
 なぜ捨てようと思ったのか。お盆で実家に行った。実家には年老いた母親が一人で住んでいる。この実家がモノであふれかえっている。以前から気になってはいた。それがここ数年でとみにひどくなっている。かつては三世代が同居していた家である。大きな家ではない。けれど、昔の古い家で、それなりに部屋数がある。現在、母が居住スペースとして使っているのは、台所と寝室くらいなものだ。残りの部屋はすべて物置部屋と化している。
 いつか、それもそう遠くないだろういつか、これらのモノをすべて処分しなければならないことを思うと、ほとほと気が滅入った。
 それで家に帰って改めて自分の部屋を見渡すと、こちらもモノであふれている。本棚に空きスペースはない。机や床の上には紙類が積み重なっている。とりあえずいまの自分の部屋だけでも整理しようと思い立ったわけである。
 観光パンフレットや新聞の切り抜きは、ブログのネタにしようと集めたものだ。しかし後で見返すことはほとんどなかった。読み終えて本棚に収めてある本も再読することはまずないであろう。ここは思い切りが必要だ。
 古本は、雑誌類も含めて80冊ほどをリサイクル書店に持っていった。だが値が付いたのは、そのうちの30冊。受け取った金額は1060円、平均して一冊30円程度にしかならない。高村薫や大江健三郎、村上春樹などの分厚い単行本は買ったときには高かったし、それなりに思い入れも深かった。けれどもそうした個人的な事情はまったく考慮されずに(当たり前だけど)、出版年度の古い本はすべてゼロ円だった。
 モノを捨てるということは、自分のこだわりや思い入れも一緒に捨て去ることだと悟った。部屋の整理に取りかかる前は、やり終えたらさぞ気持ちがすっきりして、心は充実感や達成感で満たされるであろうと期待していた。しかし費やした時間と労力に見合うだけの心地よさは得られず、精神的な徒労感と虚脱感だけが残り、げんなりとした心持ちになった。

 さてレコードの話に戻る。査定の待ち時間にレコード棚をパタパタとやったのがいけなかった。
 格安レコードは、アナログレコードの終焉期に発売されたものが多い。年代でいうと1980年から84年ごろだ。この時期にCDが出現して音楽ソフトの主役がレコードからCDに移行した。私にとってはこの時代がちょうど洋楽を聴き始めた時期と重なっている。そのためこの年代にヒットした洋楽のアルバムの多くは、実際にそれを聴いたかどうかは別にして、アルバムタイトルやジャケットデザインが何となく記憶の片隅に残っている。それでそうしたアルバムを目の当たりにすると、その音楽が好みであろうがなかろうが、懐かしさのせいでついつい聴いてみたくなってしまう。

 このアルバム(クリストファー・クロス『アナザー・ページ』)に入っている「オールライト」は、あのころのFMラジオやMTVでしょっちゅうかかっていた気がする。この種の音楽(AOR)は、当時の私にはあまりピンとこなかった。もっとハードなものを好んで聴いていたからだ。ジャーニーやトト、エイジアあたりまではよかったけれど、このクリストファー・クロスやエア・サプライになると、なんだかきれいすぎる感じがして、敬遠した。
 いま聴き直してみても端整なメロディや洗練されたアレンジに感心はする。ハイトーンヴォイスの美しさも際立ってはいる。けれど、やはり総体的な印象は、当時もいまもそう変わらない。楽曲それぞれにあまり特徴がなく、さらっと流れていってしまう感がある。整いすぎていて引っかかるところがない。要はこういうタイプの音楽はあまり好きではないというだけのことだ。

 本や紙類はかなり減らせた。だが中古レコードは逆に増えてしまった。実を言うとクリストファー・クロスの他にもシャカタクのベスト盤や稲垣潤一の『J.I.』、南こうせつ『ねがい』(かぐや姫解散後のソロ2枚め)なども買ってしまったのだ。しかし南こうせつなんて聴くのかね? これは発売された年代のわりに美品だった。それでつい手が出た。こんな感じで性懲りもなく中古レコードは増え続ける。

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