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zoom RSS 折々の雑感113 カセットテープが見直されているらしい

<<   作成日時 : 2016/12/11 14:00   >>

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 最近、カセットテープが見直されているらしいです。

 11月5日の新聞(朝日)に「カセットテープ いま新鮮」という記事がありました。記事には、ここ数年カセットテープが若い世代に見直されているとあり、それを示す事例として次のようなことが紹介されていました。

1 2015年、中目黒にカセットテープ専門店がオープンした。
2 カセットテープで新曲を出すバンドが増えている。
3 ミュージックテープメーカー(東京電化)が製造を継続している。
4 2年前からカーオーディオメーカー(ビートソニック)が車用カセットデッキの生産を再開している。
5 2016年7月、ビックカメラがオリジナルのラジカセを発売した。

 1の店ではロックやヒップホップなど洋楽のミュージックテープを1本2千円程度で販売。店主によると、客層は10〜70代と幅広く、カセットテープを知らない若い世代は意外な音の良さに驚くといいます。
 2について。カセットで新曲を出すのは主にインディーズバンド。生産コスト(CDの6分の1ほど)が安いため。ですが、2016年6月にユニコーンがテレビドラマの主題歌をカセットテープで発表するなどブームの余波はメジャーにも及んでいるそうです。
 3の東京電化はミュージックテープの製造で国内シェア約8割を占めます。数年前までは採算が合わず、製造中止も検討していたらしい。しかし、ここ何年かのカセットブームで延命したといいます。

 1のカセットテープ専門店店主は、カセットテープが見直される理由として以下の点を挙げています。

1 カセットテープの音は心地いい。
 デジタルの高音質に慣れた耳には、カセットのローファイな音質がかえって心地よく感じられるのだそうです。店内でミュージックテープを試聴した記者は「予想以上に丸みのある音が部屋を満たす」と記事に書いています。

2 カセットデッキやラジカセの見た目が懐かしい。
 若い世代は、カセットデッキの武骨な見た目にアンティークとしての魅力を感じるらしいです。記事には「しゃれた店内に並ぶと廃れたメディアがアート作品のよう」とあります。

 さらにカセットブームの背景には「デジタル化への反動」があると先の店主はみています。
 店主によれば、近年、音楽がデータ化され、ストリーミングサービス(定額で聴き放題のサービス)なども登場。いつでも好きな曲を好きなだけ聴けるようになり、かえって音楽が聴かれなくなった。そんな時代に「触れられる形」を持っているメディアが逆に音楽へ欲求をかき立てる。カセットテープの背表紙を眺めたり、手に取ってデッキにセットするという行為が「音楽のありがたみを思い出させてくれる」とカセットテープ専門店店主は言います。

 「カセットテープは『音楽のありがたみを思い出させてくれる』デジタル時代の『新しいメディア』」という言葉には、なるほどと思います。
 しかし、やはり若い世代とは感じ方が違っているのだろう、私には、カセットテープが懐かしいアイテムという感覚はありません。なぜなら私にとってカセットテープはいまなお現役のアイテムだからです。
 普段はCDで音楽を聴くことが多いです。カセットは、音楽を聴く際のメインの機器ではないけれど、2年前に車を買い替えるまではカーオーディオはカセットだったし、小さなラジカセでいまもよくカセットテープを聴いています。
 10代後半から録りためた800本ほどのカセットテープは捨てられずに保管しています。そのほとんどがFM放送から「エアチェック」したものです。エアチェックとは、ラジオ放送、とくにFM放送をカセットテープに録音することをいいます。高校生のころからそのエアチェックに熱中しました。

 当時のFMには良質の音楽番組がたくさんありました。DJのしゃべりは曲目紹介と解説以外最小限におさえられ、たっぷり音楽だけが流れます。アーティスト特集などが組まれると、そのアーティストの歴史が解説され、発表されたアルバムから年代を追って楽曲が紹介されます。1時間や2時間の番組中ずっと同じアーティストの曲が流れ続けるのです。それらの曲をカセットテープに録音するのがエアチェックというわけです。
 こうした純粋に音楽だけを聴かせる番組(エアチェック向きの番組)は、いまのFMには見当たりません。現在もNHKFMのクラシック番組に、こうした番組は残ってはいますが、ロックやポップスに限れば、本格的な音楽番組は少ない。
 当時は、いまのようにネットを利用していつでも好きな曲を好きなだけ聴けるという時代ではなかった。レコードの相対的な値段は、現在よりもずっと高く、音楽ソフトそのものも価値、いわば「音楽のありがたみ」が、いまとはだいぶ違っていたと思います。
 そのため、イントロにDJの声がかぶることなく楽曲がフルコーラスで流れるFM番組は、私にはたいへん貴重でした。そのうえ放送の多くは一度きり。当然、ユーチューブのように繰り返しての再生は不可能で、そもそも「もう一度」なんて感覚としてもあり得なかった。ですから聴き逃しや録音の失敗は大きな痛手でした。

 そうした失敗を防ぐためにエアチェックに欠かせなかったのがFM情報誌です。全盛当時、4誌のFM誌が出版されていました。対象とする読者層によって誌面の作りが違い、それぞれに個性がありました。
 『FMレコパル』と『FM STATION』はロック・ポップス中心で若者向け。とくに『FM STATION』は鈴木英人による都会的で洗練された表紙イラストが特徴で、このイラストを使ったカセットレーベルが売りでした。『FM fan』はクラシックやジャズの記事が多く、どちらかというと落ち着いた雰囲気で大人向け。オーディオ関連の記事も充実していました。『週刊FM』は、それら他誌の中間的な位置付けで、扱うジャンルも幅広くバランスがとれた印象でした。
 私は、FMを聴き始めたころは『FM STATION』を買っていました。その後、『週刊FM』に乗り換え、最終的には『FM fan』を購読するようになりました。
 ところが90年代に入ると、FM局が増え、それと同時に番組も変化していきます。音楽よりもパーソナリティー(このころから番組の案内役をDJではなくパーソナリティーと呼ぶようになった)のしゃべりが中心となり、内容も情報化、バラエティ化してAM放送と大差なくなってしまった。NHKでさえエアチェック向きの番組は激減、民放に至ってはほぼ絶滅です。
 音楽ソフトの形体はレコードからCDへ変わり、さらにパソコンでCDのコピーが可能になったり、音楽データ配信が普及したりと、音楽を聴く環境も80年代とは様変わりしました。
 そんななかFM放送の聴かれ方も変わり、音楽ファンにとってのFM放送の位置付けが低下するという時代の流れのなかでFM情報誌の存在意義は薄れ、FM誌は次々と廃刊されていきます。

 FM情報誌の存在意義とは2週間分の詳細な番組表が掲載されていることでした。アーティスト情報や新譜紹介、オーディオ関連の記事などは他の音楽雑誌やオーディオ誌でも読むことができました。しかしFMの番組表だけはFM誌でなければ入手できなかったのです。
 番組表には放送が予定されている番組と、そこでかかる曲目のデータが記載されていました。曲目のデータとは演奏者や演奏時間、レコード番号などです。ライブであれば、録音日や録音会場などが書かれていました。
 この番組表の演奏時間を計算して、エアチェックに使うカセットテープを事前に用意するわけです。録音したい曲目が1本のカセットテープにうまく収まるようにテープ時間(46分用や60分用など)を選ぶのです。録音が終わるとカセットレーベルに曲目や演奏時間などを番組表から写して書き込み、レーベルの背にアーティスト名や特集のタイトルなどを書いて完成です。
 こうした作業をするためエアチェックには詳細な番組表が不可欠でした。つまり、音楽番組のエアチェックが廃れてしまえば、FM誌購入の一番の目的が番組表の入手である以上、FM誌は必要とされなくなってしまう。

 ともあれ、エアチェックに夢中になっていたころは、FM誌の発売が待ち遠しかった。購入するとまずは番組表をざっと眺め、どの番組でどんな特集があるか確認する。その後で番組表を詳細に見ていって録音したい曲目にマーカーで印を付け、2週間分のエアチェックの計画を立てる。演奏時間を計算し、カセットテープの準備をする。そして目当ての番組を心待ちにしていました。
 そうして、できあがったエアチェックテープを棚に並べ、レーベルのタイトルを眺めて悦に入る。カセットテープのコレクションが増えていくことがうれしかった。録音したテープを後で聴くことよりもエアチェックテープ収集に楽しみを見出していたようなところがありました。

 しかし、環境の変化とともに、FMを聴くことはあってもエアチェックはしだいにやらなくなりました。それでもしばらくはレンタルしたCDを録音するのにカセットテープを使っていました。その後、パソコンでCDのコピーをするようになるとカセットテープを買うことはなくなりました。

 こんなわけで、長年の間、カセットテープを愛用してきた私は、カセットテープに対する思い入れが強く、「カセットテープ いま新鮮」という記事を見て、これまでのカセットテープとのつき合いをついつい書いてしまいたくなったのです。

 録音メディアとしては使いませんが、昔録ったカセットテープをいまも取り出して聴くことがあります。ですから記事中の「廃れたメディア」、「アンティークとしての魅力」という表現には少し違和感がありますね。カセットテープの音質を「予想以上に丸みのある音」と記している点も引っかかります。「予想以上」という言葉を使うからには、この記事を書いた記者はいったいどれほどチープな音を想像していたのだろうと思います。カセットテープもそれなりの機器を使えば、そんなにひどい音はしないはず。
 もちろん、音のクリアさ(雑音の無さ)や音域の広さなどではCDに劣るし、表現力やつぶ立ち感(奥行き感や立体感)ではアナログレコードにはかないません。けれど、なんだかカセットテープの性能が不当に過小評価されているような印象を受け、カセットテープに大いなる愛着を持っている身としては、そんなことはないぞと擁護したい気分になります。
 
 またカセットテープの魅力について「触れられる形を持っていることが欲求をかき立てる」とあります。この見方には同意します。「形があること」は、ネットで聴く音楽やパソコンで再生する音楽ファイルにはない魅力の一つといえます。
 ただ、眺められるジャケットや手に取れる形を有するのはCDも同じ。それではなぜカセットがいいのか。CDに無くてカセットに備わっている条件とは何か。それは音楽を再生する際にテープが動く(回る)様子を目で見られる点だと、私は、思います。ゆっくりとした速度で一定の運動をするものをぼーっと眺めていると、どこか心が落ち着きませんか。
 私は、カセットテープを聴く際、再生時にテープがゆっくりと巻き取られていく様子を見るともなしに眺めていることが多いです。これはレコードも同じであって、レコードを聴く時は、ターンテーブル上のレコード盤が回転するのを何となく見つめていることが多い。たぶん滝の落水や静かな川の流れを眺めているのと同じような感覚があって、その動きや速度が自然界のリズムや身体感覚により近いこと、また電車に乗っていると眠くなることに似て、繰り返しの動きがゆったりとしたリズムになっていることが心を沈着させるのではないか、などと考えたりします。
 レコードやカセットの音は「丸みのある」、「暖かみのある」などと表現されることが多い。もちもん、これは、それらの再生音の音質の特徴をそのまま言い表しているわけです。ただ、ソフトの形状や質感、再生時の装置の動きなどから得られる音のイメージとして表現されることもあるのではないか。そんな気もします。オーディオの世界が純粋に再生される音だけを楽しむものであるならば、オーディオ機器に機能面以外のデザインや質感の意匠は必要ない。にもかかわらず現実にあれほどまでに見た目に凝った意匠のものが作られ続けているのは、やはり再生装置に触れたり、それを眺めたりということも音楽を聴く上で重要な要素であるからと思えます。

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 1987年に秋葉原で購入して以来ずっと使い続けているカセットデッキ。AKAI GX−R60です。一度ヘッドを交換しました。いまでも普通に使えます。

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