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zoom RSS 折々の雑感111 電通過労自殺は「ハイスペック女子問題」という見方(電通社員の過労自殺をめぐって2)

<<   作成日時 : 2016/11/03 22:41   >>

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 電通社員の過労自殺について考えたことを前回に書きました。その追記です。

 電通女性社員の過労自殺が労災認定されたという報道から約1カ月が過ぎました。時間が経過したこともあり、この件に関する解説記事や評論などが散見されるようになりました。これらのうちの数点を読みました。
 なかでも竹井善昭「『電通女性社員自殺』を単なる過労死にすべきでない理由」(ダイアモンド・オンライン10月18日)(1)が、とくに興味を引きました。朝日新聞の論壇時評(10月27日)で紹介されており、女性が奪われていたものは、実は『時間』ではなく、『尊厳』だったのではないか」との一節が気にかかり、読んでみました。
 以下、私なりに要約します。

― 電通女性社員の自殺を単なる過労死とすると、本質(自殺の真の原因)が見過ごされる。その本質とは、日本の企業体質に残る「女性問題」である。それは、日本企業では高学歴で優秀な女性が煙たがられるということ。そして、そうした女性たちは、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントを受ける。

 高学歴で優秀な女性(「ハイスペック女子」)が疎まれる理由は、日本人男性のなかに「女性は自分より下」という意識がいまだにあるから。企業社会は、男社会である。そこには非論理的・非合理的な文化が残る。ハイスペック女子は、こうした文化を嫌う。

 企業は、価値観が合わない若手社員や部下の尊厳を傷つける。尊厳を傷つけられることで、社員(労働者)は、死に至る。つまり自殺した女性が奪われていたものは、「時間」ではなく、「尊厳」である。

 グローバルなビジネスの世界では、従来の男社会の感覚は通用しない。ハイスペック女子の論理的・合理的な感覚のほうが通用する。したがって、これまでの男社会の文化や価値観を有したままでは、日本企業は生き残れない。悲劇を繰り返さないため、また日本企業の生き残りのためにも、この件を単なる過労死事件に矮小化してはならない。―

 私は、最初にこの報道に接したとき、自殺した女性社員が「東大卒で美人」という点にまず目がいきました。新聞の報道を読んだ後で書店に行き、いつくかの週刊誌を手に取り、本件を扱った記事を立ち読みしました。そこに掲載されていた当人の写真、とくに学生時代のものを見て、「美人だ」と思いました。これらの写真と東大卒という学歴を考え合わせて「東大卒で仕事も有能、しかも美人。だからいじめられたのでは?」と直感しました。
 前回のブログにこのことを書こうと思いましたが、少し俗っぽく下世話な感じがして止めました。後から竹井の指摘を読み、この問題を考える上で、「東大卒、美人」という点は、やはり外せないポイントであった、と、納得がいったのです。

 竹井の文章を紹介している同じ紙面に、津田大介の時評「電通過労死 見えぬ核心」(2)が掲載されています。ここでも竹井と同じような指摘がなされています。要旨は以下の通り。

― もちろん長時間労働や過重労働は問題である。だが、そこだけを見ると、問題の核心を見失う。
 自殺の背景にはパワーハラスメントとセクシャルハラスメントがあった。
 この問題の根幹は、日本の古い労務環境にある。そのもとでは、若い女性がハラスメントに遭いやすい。
 若者の死を無駄にしないため、本件をきっかけに様々な仕組みを改革しなければならない。―
 
 ほかにネット広告という仕事の特異性を取り上げ、通常の広告業務よりも負担が大きいことを指摘。さらに業界全体で「勤務間インターバル規制(勤務終了時から翌日始業時まで原則11時間以上の休息時間を保障する制度)」を導入する必要性を説いています。
 論点の違いはありつつも、女性がハラスメントを受けやすい日本の古い企業体質や文化に問題の本質があるとする見解は、竹井の分析と共通しています。
 自殺した女性社員の次のツイートは、強い印象を残します。竹井は、自殺の「本当の理由」がそこにあるとしています。

「いくら年功序列だ、役職に就いているんだって言ってもさ、常識を外れたことを言ったらだめだよね。人を意味なく傷つけるのはだめだよね。おじさんになっても気がつかないのは本当にだめだよね。だめなおじさんだらけ」

 雨宮処凛も、「電通過労死認定から、この国の非常識な『普通』を考える」(ハフィントンポスト10月20日)(3)において、過労自殺は、ほとんどの場合、長時間労働に加えて、上司のパワーハラスメントが原因であると指摘しています。
 かつて取材した別の過労死事件について言及するなかで、遺族が語った次のような言葉が印象に残っているといいます。

「本当は、はっきり言えば上司なんですよ。かならず過労死って3人くらい、上司がかかわっているんですよ。ダメな上司が3人いると死んじゃう。ほかの遺族の話を聞いてもやっぱり3人なんですよ」

 パワーハラスメントをした上司もまた過酷な労働環境のもとで「壊れて」いるからそうなるのだろうと述べています。

「時に部下を死に追いつめる『パワハラ上司』たちも、過酷すぎる労働環境の中、過剰適応の果てに心が破壊され尽くした存在のようにも思えてくる。部下に靴でビールを飲ませるなんて、自らが相当「壊れて」いないとできることではない」

「時に誰かをいじめ殺したり、死者が出ることが前提の組織や働き方は、絶対におかしい。どうしてこの国の人々は、それほどに『仕事』の優先順位が高いのだろう」


 電通では1991年にも入社2年目の男性社員が過労自殺しています。これに対し遺族により訴訟が起こされました。上記の「部下に靴でビールを飲ませる」という話は、その裁判記録に書かれているハラスメントの証言だそうです。雨宮のブログには次のようにあります。

「91年に亡くなった男性も、壮絶と言っていいパワハラを受けていた。資料を読み込んでいて私がもっとも衝撃を受けたのは、宴席でのハラスメントだ。その内容は、革靴にビールを入れて飲ませるというもの。飲まなければ、靴の踵で叩くのだという。上司は、『面白半分に』やっていたと証言している。
 この事実を知って、私は日本の企業社会が心の底から怖くなった。信じられないほどの幼稚さと、信じられないほどの陰湿さが同居した部下いじめ。
 ハラスメントは、過労死・過労自殺に必ずと言っていいほどつきまとう


 ここまで書いてきて気づくのは、「では自分はどうなんだ」ということ。「女性は自分より下」という意識はないのか? はっきりあると思う。「面白半分に人をからかうことはないのか?」 そういうこともある。
 ただ、こうした意識や振る舞いが、すぐにハラスメントに直結するわけではありません。けれども、自分は絶対にハラスメントをしないと言い切る自信もまたないのであって、状況いかんによっては、そういうこともありうる。
 顧みれば、仕事をするなかで、相手に対して攻撃的な物言いをしたり、不誠実な態度を取ったりしたことが数多く思い返されます。言い訳するわけではありませんが、そういうときは、たいてい心身ともに疲弊していたり、追い込まれているときです。
 こうしてみると、いまの日本の企業社会においてハラスメントが横行しているということは、仕事を続けるなかで身も心も追い詰められている人がたくさんいるということの左証でもあります。なぜそういう人がたくさんいるのかということを考えなければ、長時間労働や過労死はなくならないと思います。

 私の勤める会社は、竹井が問題にしているような大企業ではなく、地方にある中小企業です。「グローバルなビジネスの世界」も「ハイスッペク女子問題」からも程遠い。しかし、明らかに従来型の男社会であり、非論理的・非合理的と感じる場面にも時おり遭遇します。
 あからさまなパワーハラスメントやセクシャルハラスメントに直面した経験はありません。けれど、そうしたことを引き起こしそうな土壌があることは感じています。
 とくに飲み会の席。管理職の男性が若い女性社員を容姿やプライベートな話題を持ち出してからかう、年上の先輩社員が若手を「いじる」、それで「笑いをとる」というようなことは普通にある。露骨なセクハラ、陰湿ないじめのレベルとは言えず、場の雰囲気を保つため、私も「部長、それはセクハラですよ」などと諌める勇気はないのですが、はたで聞いていてあまり気持ちのいいものではない。だから会社の飲み会は嫌いです。
 とはいえ「飲み会なんてどこもそんなもんじゃないか」という声が聞こえてきそうです。ですが、こうしたことを普通、当たり前とするような企業文化や意識が根底にあるからこそ、本件のような問題を引き起こしているのだろうと思います。

(1)竹井善昭「『電通女性社員自殺』を単なる過労死にすべきでない理由」(ダイアモンド・オンライン10月18日)http://diamond.jp/articles/-/104894 2016/10/27アクセス

(2)津田大介「電通過労死 見えぬ核心」(2016年10月27日付朝日新聞 論壇時評「あすを探る メディア」)

(3)雨宮処凛「電通過労死認定から、この国の非常識な『普通』を考える」(ハフィントンポスト10月20日)http://www.huffingtonpost.jp/karin-amamiya/death-by-over-working_b_12567780.html 2016/10/27アクセス

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